オカヤドカリとは? - るりおかかの気まぐれブログ
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2017/12/01

オカヤドカリとは?

オカヤドカリとは?
 オカヤドカリとは、名前の通り丘に住むヤドカリです。日本では、南日本、小笠原、琉球諸島から南洋の島々に分布し、海岸の茂みや石の下に住んでいます。幼生期は海で浮遊生活をし、ヤドカリの姿になってからは陸で生活するようになります。夜間に活動し、産卵時以外は海水に入りません。地面に落ちた果実や植物の花や葉、浜辺に打ち上げられた魚、人間の残飯など何でも食べる雑食性で、海岸の有機物を何でも食べることから「浜辺の掃除屋」と呼ばれたりもしているようです。日本には、6種類が生息しており、その全てが天然記念物に指定されています。そんな天然記念物のオカヤドカリですが、個体数が多いため(ただし減少中です)、特定の販売業者による採集が認められており(採集量に制限があります)、一般の方でも飼育が可能となっています。以前は、オカヤドカリの飼育は困難を極めたようですが、多くの愛好家たちの努力により、繁殖まで成功するに至りました。オカヤドカリの寿命は20~30年といわれています。飼育目標として「30年」、頑張っていきたいですね。


形態・背負っている貝殻の役目
 オカヤドカリは、貝殻の外に出ている部分である前甲や足は石灰化して硬くなっており、後甲や腹部は柔らかく貝殻に入ることで守られています。第1脚は、食事や喧嘩に、また、左はさみで貝殻に蓋をする役目もあります。第2脚、第3脚は歩くための足として使用し、貝殻に入った小さな第4脚と第5脚で貝殻を支えています。貝殻を背負うことで、体の柔らかい部分を保護し、また、殻の中に水を蓄える役割もしています。オカヤドカリはもともと海で生活していたヤドカリから分化したもので、その名残で鰓呼吸をしております。そのため、鰓を常に湿らせておく必要があります。また、呼吸において鰓の機能が不十分であり、水を湿らせた腹部で皮膚呼吸も行っており、貝殻内の水は定期的に交換しなければなりません。そのため、オカヤドカリにとって貝殻は生きるための大変重要なアイテムといえます。
オカヤドカリ:体の構造




生活史
 オカヤドカリの生活史はとても変わっています。メスの貝殻内で卵として生まれ、孵化直前になるまで発生が進みます。そして、メスが海に幼生を放します。孵化直後は、ゾエア幼生として生まれ、数回の脱皮を経て姿を変えていきます。グラウコトエ幼生になるとオカヤドカリの形にかなり近づき、さらにもう1回の脱皮を経て稚ヤドカリになり、自身のサイズに合った貝殻を見つけて背負い、陸上生活を始めます。稚ヤドカリは海直近の浜辺で生活し、大きくなるにつれて内陸側で生活するようになります。そして、繁殖の時期になり、交尾・産卵をして、幼生の孵化が近づくと、メスが幼生を海に放します。
オカヤドカリの生活史




オカヤドカリの種類
 日本には、全6種のオカヤドカリが生息します。日本で一番多くみられるのが、ムラサキオカヤドカリとナキオカヤドカリで、ついでオカヤドカリとなっています。ペットショップや祭りの夜店で見られる大半がこの3種です。稀にオオナキオカヤドカリ、コムラサキオカヤドカリが混じることがあるようです。サキシマオカヤドカリは日本ではかなり希少なため、まず見ることはないでしょう。


 ・オカヤドカリ
 海岸近くの林より内陸側の林に住みます。繁殖のとき以外は、海岸近くで見かけることは稀です。内陸で生活するため、陸生のアフリカマイマイの殻を利用することが多いようです。小さいころはカラーバリエーションが多く、他の種類との見分けがつきにくく、他種とは目柄の形態、色で見分けることが出来ます(目柄が棒状、黒いことが多い)。大きくなるにつれて濃いオリーブ色になってきます。日本で一番大きくなるオカヤドカリです。
オカヤドカリの種類:オカヤドカリ



 ・ムラサキオカヤドカリ
 海外での採集報告がなく、日本固有種の可能性があります。日本でもっともふつうにみられます。小さいころはオカヤドカリ同様カラバリが多く(白いことが多い)、成長するにしたがって、紫色になります。目柄の形態がトウモロコシ状で白いため、オカヤドカリと区別することができます。
オカヤドカリの種類:ムラサキオカヤドカリ



 ・ナキオカヤドカリ
 紫・白・赤・黒等、非常にカラバリに富んでおり、一見すると、全く他の種類と区別がつきません。目柄がムラサキオカヤドカリと同様トウモロコシ状で白いのですが、目柄の下の部分が黒いため、ナキオカヤドカリだと区別できます。大きくなると薄いオリーブ色になるようです。海岸近くの砂浜とアダンの林に住み、日本で最も小さいオカヤドカリです。
オカヤドカリ種類:ナキオカヤドカリ



 ・オオナキオカヤドカリ
 海岸近くの林に住み、日本では個体数が少なく準絶滅危惧種に指定されています。目柄が、海のホンヤドカリのように棒状であるため、多種と容易に区別することが出来ます。そのため、稀に「レアもの」として販売されていることがありますが、それは悪質です。海外では個体数が多く、世界的にみれば全く珍しい種ではありません。くれぐれも騙されないように気を付けましょう。
オカヤドカリの種類:オオナキオカヤドカリ



 ・コムラサキオカヤドカリ
 マングローブ林の河口域に生息します。体色は、小さいうちは赤色で、大きくなると濃い紫色で和名の由来となっています。チョウセンサザエの殻をよく利用するようです。日本では個体数が少なく、準絶滅危惧種に指定されています。
オカヤドカリの種類:コムラサキオカヤドカリ



 ・サキシマオカヤドカリ
 体全体が赤いオカヤドカリです。八重山諸島の黒島で1個体が発見されたあと、石垣島で2個体発見されました。小笠原諸島にも生息しているようです。個体数が少なく、日本では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。日本では数匹しか確認されておらず、無効分散の可能性が高いといわれています。
オカヤドカリの種類:サキシマオカヤドカリ




オカヤドカリ流通の歴史
 「あまん」(「資源としての採取」当山昌直)によると、オカヤドカリがペットとして本土にお目見えしたのは、昭和9年頃からで、東京の坂庄太郎という人物が採取、販売したのが始まりだったそうです。戦後になるとオカヤドカリの存在もしだいに知られるようになり、流通する量も増加の一途をたどりました。昭和42年(1967)には10トンを超え、昭和57年(1982)には最盛期の56トン以上の取引量を記録しました。しかし、気がつくとかつては無尽蔵にいたオカヤドカリも各地で減少し、今現在も減少の一途をたどっています。飼育されている方、これから飼育しようと思われている方、そんな事情があるのだと頭の片隅に入れていただければと心から願います。


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